これを読めばわかる気がする!鳥取空港の新出発・到着方式変更点(2026.02Ver.)

AIRAC 2602以降、エアバンドから聞こえたAGULI, RNP Zの謎を追う

鳥取空港(RJOR)の新アプローチ方式等変更イメージ
鳥取空港(RJOR)の新アプローチ方式等変更イメージ

鳥取で馴染みのない言葉が聞こえてきた

2月19日、鳥取空港で撮影していると無線からこんな言葉が聞こえてきた。

「Request RNP Z(Zulu) RWY10」

……ん?10なのにRNP?そしてZってなんやZって。

さらに数日後の2月22日。今度は「ILS Y(Yankee) RWY10……Direct AGULI」という指示が出ている。AGULI?初耳やぞ。

しかもフライトレーダーを見ていると、RWY10への着陸なのに飛行機が空港の真上を通らず、東からやってきて北側へと変な方向へ進んでいく。エアバンドを聞かずに画面だけ見ていた人は「え、スコーク1200(VFR)じゃないのに、VFRみたいにレフトブレイクしていくの!?」と驚いたに違いない。

その後気になりAIPを調べてみたら、まさに最初の無線を聞いた2026年2月19日施行の AIRAC 2602 で、鳥取空港(RJOR)の計器進入・出発方式(SID/STAR/アプローチ)が大幅に改訂されていた。発効日即日で早速新方式が適用されていたのだ。そして、変更点かなり多い。

鳥取空港(RJOR)ってどんな空港?

滑走路は10/28の1本だけ。定期便はB737-800(B3)とA320/321が主力で、修学旅行シーズンなど繁忙期にB767(B6)がたまに来るくらいの小さな空港だ。

ただし、山陰の冬は手強い。日本海からの季節風で雲底が低く、視程も悪くなりやすい。さらに東側の進入経路上には摩尼山(357m)などの地形が控えていて、RWY28へのアプローチは地形的にも難しいとされている。「降りたいのに降りられない」が起きやすい空港なのだ。

だからこそ、今回の改訂は意味があると考える。

何が変わったの?

アプローチ方式が一気に5つ増えた

新設された方式(2026.02.19〜)

方式 滑走路 特徴
ILS Y RWY10 10 AGULI経由の新ルート。RF leg使用
RNP Z RWY10 (AR) 10 Authorization Required。高精度
RNP Y RWY10 (AR) 10 Authorization Required。RF leg
RNP X RWY10 10 認可不要のRNP APCH
RNP Y RWY28 (AR) 28 28番へのストレートイン新設

既存の3方式(ILS Z, VOR 10, RNP Z 28)と合わせ、滑走路1本の小さな空港に合計8方式。なかなかの充実ぶりだ。

既存方式の名前が変わった

ILS or LOC RWY10 → ILS Z or LOC RWY10

ILS Y が新設されたので、従来の ILS に「Z」サフィックスが付いた。これが「RNP Z」「ILS Z」という聞き慣れない言葉が飛び交うようになった理由のひとつだ。

RNP RWY28(AR) → RNP Z RWY28(AR)

同様に「Z」が追加。さらにルートが大幅に変更され、ミニマ(最低気象条件)も改善された。

ILS Y RWY10 の新しいウエイポイント「AGULI」

新設された ILS Y RWY10 のルートはこうなっている。

KANNA(IAF)→ AGULI → OR055 → UKDEP(FAF)→ RW10

KANNA から AGULI への区間が RF leg(曲線飛行経路) になっていて、空港の真上を通らずに北側を弧を描いて回り込んでくる。

RWY10到着方式(VFR場周経路との比較)【青線がILS Y、オレンジ線がRNP Z】図に描き込んだVFRの場周経路(緑色の四角いルート)と見比べてほしい。青線のILS Yが、レフトダウンウィンドの動きに似ていることがわかる。
RWY10到着方式(VFR場周経路との比較)【青線がILS Y、オレンジ線がRNP Z】図に描き込んだVFRの場周経路(緑色の四角いルート)と見比べてほしい。青線のILS Yが、レフトダウンウィンドの動きに似ていることがわかる。

この「東から進入してきて空港北側へ弧を描く軌跡」は、まるでVFRの機体がRWY10のレフトダウンウィンド(左回りの場周経路)にブレイクしていくような動きに見間違えそうになる。

ただ、図を見るとわかるように、実際のVFRの場周経路(緑の点線)と比べると、青線の ILS Y は滑走路からかなり距離が離れて大回りしている。そのため、パッと見ではトラフィックパターンに入ったとは気づきにくいかもしれない。 AGULIは今回の改訂で新設されたウェイポイント。無線を聞かずにフライトレーダーの航跡だけをぼんやり追っていると、「あれ、高度処理(降下)を間違えて、遠回りして高度を落としてる?」なんて勘違いしてしまいそうだ。完全な罠である。

RNP Z RWY28 のミニマが改善

既存の RNP RWY28(AR) が RNP Z RWY28(AR) に改称され、ルートも大幅変更。そしてミニマが下がった。

新(RNP 0.10)
CAT C DA 1600ft 1400ft
CAT D DA 1800ft 1600ft

200ftの差は悪天候の鳥取ではかなり大きい。B3/A320/A321 で認可を取得しているクルーには朗報だ。

また、ゴーアラウンド後のホールドポイントが ISASA → TRE(VOR) に変更された。ISASA は空港からかなり離れた北東の海上にあるので、ゴーアラのたびに遠くまで引き返さなくて良くなったのは地味だが大きな改善だ。 ちなみにこのTREでの新しいホールドパターン、航跡を地図上でよく見ると、なんと空港のすぐ南にある「湖山池(こやまいけ)」の上空をぐるぐると回るルートになっている。「あ、ゴーアラしたな」と思ったら、そのまま優雅な湖山池一周上空ツアーが始まるのをフライトレーダーで眺めるのも、今回の改訂における新たな楽しみ方(?)かもしれない。

新設されたRNP Y RWY28(AR)(青線)と、ルート変更されたRNP Z RWY28(AR)(赤線)。東側に控える地形を縫うように進入していく。
新設されたRNP Y RWY28(AR)(青線)と、ルート変更されたRNP Z RWY28(AR)(赤線)。東側に控える地形を縫うように進入していく。

出発方式(SID)も更新された

MIYAZU ONE DEPARTURE → MIYAZU TWO DEPARTURE

RWY10 の初期コースが 101°M から 102°M に1度変更された。磁気偏差の更新(-7.6 → -8.5)に伴うもの。数字は地味だが、リビジョンが上がって名称が「TWO」に更新されているので要注意。

今後の主流は?さよなら、ハイステーション

今回の改訂全体を俯瞰すると、要するに「運用効率を極限まで高めるための方式追加」と言っていいだろう。ここまで一気に方式が増えると、今後はRWY10に対するアプローチの選択優先順位は以下のようになっていくと推測される。

  1. RNP Z RWY10 (AR) ANAのB3(737-800)やA320/321といったRNP AR認可機が積極的に選択するであろう大本命ルート。最短距離で滑走路へ向かえ、燃料も時間も節約できる。
  2. ILS Y RWY10 面白いのがB6(767)の動向だ。B6は現状RNP ARの認可を持っていないとみられるが、「ILS Y」なら飛ぶことができると予想される。AR認可がなくても、RF legを使ってショートカットの恩恵を受けられるため、ANAのB6にとって非常にありがたい新ルートになるだろう。(もちろん、気象条件が悪いときの切り札としても使われる)
  3. ILS Z / LOC / RNP X RWY10 たまに飛来するチャーター機など、鳥取に不慣れだったり機材要件を満たしていないフライトが、今後も手堅く踏襲すると思われる従来方式。

定期路線がこぞって上位の新ルートを選ぶのには、明確な理由がある。レーダー誘導(レーダーベクター)が行われない鳥取空港では、従来方式(ILS Zなど)をフル・プロシージャで飛ぶ場合、一度高い高度のまま空港上空(TRE VOR)までやってきて(=ハイステーション)、そこから海側へ向かって高度を処理し、時間をかけて旋回して戻ってくるという「儀式」が必要だったからだ。そしてこれは、日没との絡みを狙う撮影者にとっては「あと数分早ければ」のヤキモキする時間が短縮される効果もある。

しかし今後は、機材の能力に合わせて「RNP Z」や「ILS Y」を選択し、KANNAなどのIAFから直接スマートに滑走路へ向かう方式が主流になる。 つまり、空港付近でカメラを構えながら「おっ、ハイステーションで一度自分の真上を飛んでいくぞ」と見上げるチャンスは、これからどんどん少なくなっていくだろう。効率的で便利になる反面、航空ファンとしてはちょっとだけ寂しい気もする。

ちょっと用語解説

AIRAC(エアラック)って何?

Aeronautical Information Regulation And Control の略。飛行ルートや周波数などの航空情報は、パイロットの混乱を防ぐため、ICAO(国際民間航空機関)のルールに基づき「28日ごとの木曜日」に世界一斉でアップデートされる。 もちろん日本のJCAB(国土交通省 航空局)もこの世界共通サイクルに完全同期している。今回の「2602」は「2026年の第2サイクル(2月19日発効)」という意味。まさにこのダイヤ改正のタイミングで、鳥取空港のチャートがガラッと生まれ変わったのだ。

RNP と RNP AR の違い

RNP APCH RNP AR
認可 不要 必要(機体・会社・乗員の三層)
RF leg(曲線) なし あり
精度 0.3NM 0.1NM以下も

RNP AR は「Authorization Required」の略で、特別な認可が必要な高精度方式。曲線経路(RF leg)が使えるので、山を避けながら精密に進入できる。鳥取の東側にそびえる摩尼山のような障害地形をクリアするのには特に有効だ。

RNP の精度値

意味
RNP 0.1 95%の時間、経路中心から ±0.1NM 以内。高精度
RNP 0.3 95%の時間、経路中心から ±0.3NM 以内。標準

コンテインメント値(99.999%保証)は RNP 値の2倍。 精度が高い(数字が小さい)ほど DA を低く設定できる。

機体による対応の違い

B6(767)は機材のシステム要件などから、現状 RNP AR の認可を取得していないとみられている。そのため、RWY28 へのストレートイン精密進入ができず、サークリング(MDA 630〜900ft台)しか選択肢がないため、北西の季節風が強い山陰の冬は厳しい戦いを強いられる。

RNP Y RWY28 (AR) という新しいインフラは整ったものの、B6が改修を経て対応FMSと認可を取得するかどうかは不透明だ。いつかB6でも飛べる日が来るのを期待したい。

まとめ

2026年2月19日施行の AIRAC 2602 で、鳥取空港の計器方式はかなり大きく変わった。

  • アプローチ方式が5つ新設、既存を含め計8方式に
  • ILS/RNP に「Z」サフィックスが導入
  • 新ウェイポイント AGULI がルートに加わり、ILS10でも空港真上を通らない経路が登場
  • RNP Z RWY28 のミニマが200ft改善
  • ゴーアラ後のホールドが ISASA → TRE に短縮、もれなく湖山池一周ツアー付き
  • MIYAZU SID が ONE → TWO に更新
  • 定期路線を中心に効率化が進み、ハイステーション進入が減りそう
Aviation Photographer(航空写真作家) / Programmer

航空写真作家でありプログラマ。鳥取と羽田を拠点に情景的ヒコーキ写真を追求。PENTAXユーザー。阪神が試合してる時はうるさいです。

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